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zoom RSS 海野 弘著『ホモセクシャルの世界史』を勧めます。

<<   作成日時 : 2008/01/25 19:36   >>

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海野弘著「ホモセクシャルの世界史」(文芸春秋 2005年4月刊)を読み終えた。543ページもの分厚さで、しかも少しずつ読んだために、ずいぶん時間がかかったが。読み応えは充分だ。
古代から21世紀に渡る、主に文学者や芸術家などのゲイの人々の歴史が、広い視野の中でパノラマ風に展開されていて、圧倒されると同時に、ゲイの一人として力づけられた。(日本は一応除かれているが)。
 特に印象に残った文章を、やや長くなるが二、三挙げてみよう。
「芸術が、ホモセクシャルに押し付けられた汚辱の一部を浄化しているのは確かなようである」「二十世紀は、ホモセクシャルが表現を持つようになった時代だ、といえるかもしれない。しかしそれは社会から呪われ、追放されていたから、その表現は、二重三重に屈折し、隠されなければならなかった。しかしその困難の故に、複雑で精緻なタピスリが織り出されたのであった。ジェフリー・マイヤーズ(「同性愛と文学 1890-1930」(1977年刊)の著者)は、それを1890-1930年の間に限定している」「二十世紀の重要な作家の多くがホモセクシャルへの関心を持っていたことは、文学の研究者にはよく知られている」
 私はこの本を読むことによって、これまではゲイだとは知らなかった芸術家や思想家などについて知識を持つことができた。
例えば、オランダの思想家エラスムス、フランスの作曲家のサン=サーンスやモーリス・ラヴェル、スペインの作曲家ファリャ、ドイツの詩人リルケ、イギリスの作家D.H.ロレンス、アメリカの作家メルヴィル、ロシアの作家ゴーゴリなどだ。本作の中に、「ニコライ・ゴーゴリはそのこと(同性愛・・・荻崎 注)に悩み続けた」とある。
 ゴーゴリ(1809〜1852)の短編小説『外套』は、深い哀感が漂っていて、それはどこからくるのだろうと、以前から思うことがあったのだが、作者の秘められた同性愛指向も一因だったのかと納得した。
 ちなみに、同じロシアの作曲家チャイコフスキー(1840〜1893)の作品の中の哀感と、通底するものがあるのではと私は思う。
 本書を読んだことがきっかけで、ゴーゴリのこれまでに読んだことのない長編『死せる魂』を読み始めた。まだ全体の五分の一も読んでいないのだが、作中で「彼の考えていたのは友情の法悦ということで、親友と一緒にどこかの川べりあたりに暮らしたらさぞよかろうと思っているうちに・・・」と、登場人物の一人がしみじみと心情を述べ、心引かれる。又、ノズドリョフという黒髪の男の描写で「中背ながら筋骨のたくましい若者で、まるまるとした赤い頬(ほお)と、雪のように白い歯と・・・彼は若鮎のようにぴちぴちしていて、健康がそのまま顔から飛び出しそうなふうだった」を読むと、このような若者がゴーゴリの惹かれるタイプの男だったんだろうなと、勝手に想像できたりして楽しい。全体を読み終わるのが楽しみだ。
 私が読んでいる河出書房新社版(昭和38年刊)の巻末のゴーゴリ年譜によると、作者の亡くなった1852年(43歳)の項に、「精神錯乱のうちに・・・悶死す」とある。或いは、自己の裡(うち)に秘め抑圧し続けるしかなかった同性愛の欲望もその一因かもしれないと考えると、大変痛ましい。
 
 いずれにしても、私にとって、『ホモセクシャルの世界史』を読むことで得るものは大きかった。
 ただ、本書が一般のメディアやジャーナリズムなどで、余り取り上げられていないように見えるのは、同性愛(者)を真正面から取り上げたものに対し、異性愛者が多数を占める一般社会の側の嫌悪や無視などが、21世紀の現在でも根強く存在するのが一因かと思うと、気分がやや暗くなる。
 それはともかく、定価(本体3200円+税)とかなり高いのは難だが、性的指向を問わず総ての人に、お勧めしたい本だ。
                     
(2008.1.28改稿) (第45回)

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