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zoom RSS ミケランジェロ―天才の色欲(しきよく)

<<   作成日時 : 2013/11/09 13:32   >>

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画像「ミケランジェロ展 天才の軌跡  システィーナ礼拝堂500年祭記念」を9月から10月にかけて都合4回も(!)見てしまった。(国立西洋美術館 会期は11月17日(日)まで)
9月に最初に訪れた時は、さほど念入りに見て廻った訳ではなかった。ところが、それから何日か経った頃、これは当ブログでも取り上げたいという思いが強くなったこともあり、二度目に見た時、図録を購入した。
 綿密な図録を読み終わると、これに書かれた事柄と実物を見比べたいという思いも募り、更にいざブログに取りかかろうとすると会場で確かめたい事柄も幾つか生じたりして、結局10月に入り、更に二度見ることになった。(10月末の四度め、それまでに比べ格段に会場が混雑していたのは、会期末が近づきつつあることにもよるのだろうが、当展の人気がじわじわ高まってきたせいなのかもしれない)。
 奇矯(ききょう)に響くかどうか、端的に言って、私(荻崎)はミケランジェロ・ブオナローティ(1475〜1564)の同性である男の体に向かう色情(しきじょう)の、生涯に渡る激しさと濃さに打たれた。
 今回の展示は、ミケランジェロの作品を保管しているカーサ・ブオナローティ(「ブオナローティ家の邸宅」の意という)(所在地はイタリアのフィレンツェ)の所蔵品によるが、同館所蔵の代表作二点は、ともに大理石浮彫である『ケンタウロスの戦い』と『階段の聖母』とのこと。本展には後者のみ展示されている。
 画面左上段は、『ケンタウロスの戦い』だが、残念ながら本展では実物を見ることはできない。(画像は図録による)。図録に付された年譜によると、15歳の時の作品だということに驚かされる。(15歳から17歳にかけて制作されたという日本人研究者の説も記されている)。
ひしめき合う男性裸体群は、ギリシャ神話に仮託することで、少年ミケランジェロの自己のうちに漲(みなぎ)る同性の体に対する欲情の激しさと願望が、若いがゆえにより抑制されることなく率直にほとばしったと私には見える。
 私が普段体験する場面の中では、はってんサウナの大部屋の光景が連想されるが、実際にはこれほどの数が絡み合うことはない。こうした連想は彼の作品を少しも貶(おとし)めることにはならないと私は考える。男たちの体への途方もなく激しい欲情こそ、89年間という独身だった長い生涯に渡って衰えることなく持続された彼の創作欲の最大の源泉だったに違いないと私は思う。
画像 左中段の画像は会場に展示されているミケランジェロの肖像。マルチェッロ・ヴェヌスティの作で、伝統的な説では、1535年頃、ミケランジェロ60歳の頃だろうとのこと。表情もそうだが、殊(こと)に両眼に湛(たた)えられた底深い哀しみや断念、反面の持続する執念を私は感じる。絵画、彫刻、建築に渡る、まさに天才としか言いようのない制作(更に詩人でもあった)とそれらにまつわる苦渋、加えてそれらと不可分に絡みつく男の体への分厚い欲念。彼の両眼が湛えたものはそうした双方からおもに由来するのだろう・・・。
 同性に対する色情を当時のイタリア社会の政治や宗教その他の状況の中で、現実にどのように満たすことができたかどうか私には不明だが、恐らく叶えられないことの方が圧倒的に多かったに違いない。或いはほとんど叶えられなかったかもしれない・・・。
 彼は画家としてよりも彫刻家としての自己に誇りを持っていたという。私が所蔵いている「ファブリ―研秀世界美術全集」(1976年 研秀出版刊)の第二巻「レオナルド/ミケランジェロ/ラファエロ/ボッティチェルリ」には、「私は石塊から邪魔なものを取り除くだけだ」という彼の彫刻観が紹介されている。本展の図録にも「・・・大理石の中でそれは余計なものに包まれてあり・・・」という彼のソネットが引用されている。
 大理石の中から、彼は焦がれる男の体を掘り当てよう、取り出そうとしたのではないか。彫刻は絵画とは異なり、作品を自身の手で直(じか)につかみまさぐりながら、それを永遠化することができる・・・。
 「彼は建築においても、その形式を人体の機能に関連づけて考えた」と図録に解説があるが、それでもさすがに建築に携わっている時は、自身の性愛の焦燥から相応に離れ、比較的穏やかな心境でいられたのでは、と私は推測する。

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上の(左)(中)(右)三点の画像は、「最後の審判」(システィーナ礼拝堂 祭壇壁画)を基(もと)にしたもの。
「最後の審判」は、1536年(ミケランジェロ61歳)の時に制作が開始され、1541年(66歳)の時に完成し、除幕されたという。
 除幕されると、大きな反響を呼んだが、称賛の反面、陰部や尻などが露わに描かれたおびただしい数の裸体表現に対して、強い動揺や批判が起こったという。「教皇礼拝堂の作品ではなく、風呂屋か宿屋向きの作品だ」という非難もあったとのこと。完全に破壊される危険にまでさらされたということだ。幸い破壊は免れたものの、作者の没する一か月前に勅令が下り、陰部や尻などに腰布を巻くなどの変更が加えられた。作者としては腸(はらわた)の煮えくり返るような、憤(いきどお)ろしい思いがしたに違いない。
 上記左中段の作者の肖像の中の目には、直接この作品に関わっているかどうかは別として、それまでにも恐らく似たり寄ったりの体験をしたその時どきの怒りや哀しみが濃く宿っているのではと私は思う。
 
 上(左)の画像は、図録から取ったが、元はジョルジョ・ギージ(1520〜1582)作成の銅板画。1540年代中頃版刻されたものだが、1823-70年に印刷されたものという。題は『天国に昇る人びと』。
 元々の彼の銅板画は、完成し除幕された『最後の審判』を忠実に素描し、それに基づき作成されたという。この画像は、それ以降腰布などが加筆されたものとのこと。元の彼の銅板画が残っていれば、ミケランジェロが描いたままの『最後の審判』の姿を知ることができただろうのに残念だ。
 それでも、画面右斜め上の男の尻が、腰布に隠されることなくあるがまま剥き出しに描かれている点は私にはうれしい。右の太ももが陰っているように見えるのは、腰布のせいではなく影が描かれているためのようだ。この銅板画もそうだが、私は『最後の審判』中の数限りない男たちの裸の中で、がしりと大振りに盛り上がったこの尻に一番そそられる。(本ブログでは始めからこのことを一番書きたかったことを告白します。先刻見通されていたかもしれませんね)(笑)。
 左端のこちら向きの男の陰部は、この画像でははっきりしないが、会場に掛けられた同作品を見ると、腰布が当たっているとわかる。元の『最後の審判』では、そんな余計なものは何もなかったかもしれない。

インターネットのウィキペディアを参照すると、システィナ礼拝堂の天井画や壁画は、日本テレビの支援により1981年から1994年まで修復作業が行われ、裸体を隠す腰布なども一部を除き取り除かれ、元の姿に復元されたという。
 上(中)の画像は、上記研秀出版刊によるもの。1976年に刊行されているため、修復以前に撮られたのもので、確かに画面全体が薄っすら汚れ、ぼやけている。わたしが一番そそられる尻も下部から太ももにかけて腰布が描かれている。
 上(右)の画像は図録から取った。会場にも大きな画像が展示されていた。念のため美術館に問い合わせたところ、撮影年次の確かなところは分からないが、改修後の現在の作品を撮ったとのことだった。私が一番そそられる男の尻からは幸い腰布は取り払われている。右太ももはやはり影になっているようだ。
 (実は私は最初は銅板画の方のこの尻により強くそそられたのだが、よくよく見比べると両者は甲乙つけがたい・・・) 
ミケランジェロ自身、描きに描いた数限りない男たちの裸身の中で、本当はこの尻を一番描きたかったのでは、とあらぬ妄想が延びる(笑)。
  私自身は元々生身の欧米系の男たちには、顔にしろ体にしろ、まず欲情が生じないのだが、450年以上も過去の絵画で、しかも体だけで顔が見えない点が私には幸いしたのだろう。(もう分かったという声が聞こえてきそうですね)(笑) 
 それはともかく、その男から左斜め下の二体の男たちには尻や陰部に腰布が描かれている。残念ながらウィキペディアの文章ほどは修復は徹底しなかったようだ。
 ちなみに会場の一室では、TBSが2013年8月に4Kカメラで、システィーナ礼拝堂の天井画や壁画を撮影したという大画像も上映されている。


画像

 右下の画像は、本ブログの中で唯一ミケランジェロの、展示されていた実作品からで、図録から取った。
 『システィーナ礼拝堂天井画のコーニス装飾と裸体像の習作』(1508-09年頃 黒石墨、ペン/紙)と記されている。
 コーニスとは蛇腹のことで、壁面上部に沿って、水平に取り付けられた装飾的突出部、とのこと。右上の裸体の左側におぼろげに見えているものを指すのだろう。
 右上の男の分厚く充実した筋肉と姿態がいい。

 

久しぶりの更新ですが、すっかり長くなり、お読みいただいた方を疲れさせてしまったかもしれませんね・・・。


                     (2013.11.9)
 
 
 
 


 




 

 
 
 
 

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