アートに欲情しよう!

(その5) ヤギシンゴの巻
 ヤギシンゴ氏(現在 40代)の作品を始めて目にしたのは、「ファビュラス 1号」(1999(平成11)年11月 テラ出版刊)誌上だった。力強い上に躍動感のある太い線、量感に富んだ形、一見シンプルだが艶やかさのある色彩、などによって描きだされた男たちの裸の放つ分厚い色っぽさに眼をみはる思いだった。
 誌面ながら、新しいゲイ・アーティストの出現に立ち会ったという感があった。
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画面右手上段の作品には、灰色、黒、薄い黄の三色が用いられている。胸、腕、尻、太股などの締まって分厚そうな筋肉には、弾き返そうでいて、どこまでも引きずり込みそうな質感がある。顔があらかた黒く塗りつぶされた風にぼかされている分、四肢の醸(かも)し出す誘いの力が増しているようだ。
 上記の誌面で「僕の絵って、バランスとか正確じゃないんですよ。デッサンがあまりきちんとはしていない。そこが勢いとか迫力とかにつながればいいなと」と作者自ら述べているように、たとえば尻や上腕部などは通常の男の生身に比べると、大きめだ。そのことも、顔がぼかされている点と同様の働きをしているようだ。
 同誌にも掲載されていて、当コレクションの中にも入っている、赤、黒、白で男の背面を描いた作品なども含め、当館を訪れた方がヤギシンゴ氏の作品を見て、吉田カツ(1940~)氏との共通性を指摘することが多い。私もそう思う。まず間違いなく同氏から相当刺激を受けているのだろう。
 ただ、私の目には、吉田カツの描く男たちの肢体は、どこかしら乾いた質感がある。男の体に対して、ほとんど性的な欲望は抱かない異性愛者の目によって捉えられていると感じる。その点が、欲望の対象でもある男の裸を描いているヤギシンゴとの根源的な差異だと私は思う。私はヤギシンゴの描く男の体のほうにより強くそそられる(笑)。
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 右手下段の作品には、上段の絵とは異なり、赤、青、緑、白、茶など多彩な色が使われている。肉厚の尻や太股が色情的だが、欲を言うと、私には、尻の形がもう少し四角ぽく張っているほうが好ましい。(おまえの好みなど知らないよ、と言われそうだが)(笑)。
この作品には、私はイギリス生まれの画家デイヴイッド・ホックニー(1937~)の影響を感じる。(「シャワーを浴びようとする青年」(1964)など)
ホックニーもゲイの画家だが、色彩や形(フォルム)にはポップ・アートに近い軽快さや、また、抽象絵画に通じる多様な形への関心などを受け取るものの、私の目には、描かれている男たちの裸から色っぽさはさほど伝わってこない。
 これは私の願望を込めてだが、吉田カツやホックニーなどに大いに刺激を受けつつも、彼らの作品が体現していない、男の裸身の持つ艶やかで底深い官能性の領域を、ヤギシンゴ氏にはぜひ切り開いていってほしい。個人的な願望丸出しだが(笑)。
 
 新宿二丁目にあるスナック Annex(以前のクラブ ZIP)には、前述の赤、黒、白で男の背面を描いた作品を、より大きく捉えた原画が掛けられている。ちなみに、このスナックのトイレの取っ手には、隆々と反り返る男根の彫刻が用いられていて、私はたいそう気に入っていた。太々しく、握り具合が絶妙、おまけに雁首が頑(がん)と大きく申し分ない(笑)。
右手上段の絵の男根が漲(みなぎ)りのけ反ったら、あるいは似た形になるかもしれない(笑)。
 私は数日前に久しぶりに訪れ、トイレの位置は変わっていたが、この取っ手が健在であることが分かりうれしい思いをした。色が黒く塗られていたが、かつてもそうだったかは記憶が定かではない・・・。

上段…「黒と白の男の裸体」(1999 アクリル、グァッシュ) サイズ(約) 78.0  
(縦)×53.5(横)cm
下段…「シャワーを浴びる男の裸体」(2000 アクリル)  サイズ(約) 39.0
      (縦)×30.5(横)cm

荻崎正広コレクション ゲイ・アートの家」ではヤギシンゴ氏の原画を上記二点も含め、合わせて四点所蔵しています。

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