アートに欲情しよう!

(その11) 奥津直道(おくつ・なおみち)の巻
 奥津直道(1976~)の名前と作品を私が初めて知ったのは、「バディ」(テラ出版刊)2005年2月号の誌面だった。掲載されていた2点の絵画の、新鮮で力のこもった色っぽさに目を見張った。それまでに絵画や写真などゲイ・アートをそれなりの数見ているつもりだった私は、ああこういう若いゲイ・アーティストが登場したんだと考えた。junchanと署名の入った紹介の文面を読み、実は私が知らなかっただけで、その何年か前から彼は作品を発表していたことが分かったが。
画像 紙面で紹介されていた一点は、金色の地に筋骨たくましい男の横向きの上半身が描かれ、顔面に付けられた皮の拘束具が白いロープとつながっている。 
 もう一点は、頭に動物の面を乗せた男の四つ這いの図。白い褌と白の足袋。地は水色。両の尻たぶが盛り上がり、全身で男を誘っている風にも見える。
 
 2005年の正月、私は会場となっている新宿のココロカフェに行った。壁面に色鮮やかな裸の男たちの様々な姿態の図が掛けられ、作者本人がいた。もちろん直道氏本人と会うのは始めてだった。華奢(きゃしゃ)な感のする物静かな佇(たたず)まいの若者に見えた。旺盛な男くささの漲(みなぎ)る描かれた男たちの様と一見好対照なのが、私にはどこかしら納得できるような趣(おもむき)があった。
その時購入したのが、画面右手上段の作品。どれを購入するか迷った中で、男ぽくいかつそうな顔の中で、目元や口元あたりにどこか可愛げを感じたのが決め手だった気がする。加えて、分厚い筋肉が行き渡った背面の中で、ことに尻の両たぶと太ももの肉の、固く締まっていながら、置いた手や舌を吸い取るようなやわらかさが色気を放っていた。筋肉を区切る線が多用されている点に、ほかの直道作品の幾つかにも見受けられる特色がある。
 画像 画面右手下段は、今年(2009年)6月、銀座の柴田悦子画廊で行われた展覧会で購入した作品。もう一点の「雷神」と対になる形で、これは「風神」である。
 金地である点は上段作品と共通しているが、裸体の描写に、より生身に近い写実性が増している点で相違があるようだ。
 力動感に富んでいてしかも揺るぎない安定感がある点で、直道作品の一つの到達点を示していると私には映る。尻や太ももがなまめかしい点は上段の作品と同じだが、顔に可愛げや愛嬌が感じられたら、私的には更にうれしいのだが(笑)・・・。
 余談だが、直道氏は、男の裸身の中で、殊(こと)のほか尻に引かれていると見える点で私自身と共通性が感じられ、一人合点ながら喜ばしく頼もしい笑)。同時に男根自体にも強く私は引かれるが(笑)。
 
 上記の画廊と同じく銀座のヴァニラ画廊、新宿で毎夏行われているレインボーアート展、やはり新宿にあるスナック タックスノットなどで、合わせると直道氏の原画をかなりの点数見てきた。また、雑誌「ジーメン」(古川書房刊)に掲載された「直道画廊」と題された作品(私が所持しているのは2005年から2008年にかけての数冊だが)、更に雑誌「薔薇族」が一旦廃刊になって後、上野のメディア・ソフトから刊行された2005年9月号から2006年1月号にかけての誌面などで、直道作品を目にした。
 私の目にはエロスを損なっていると見えるほど、過剰なくらい筋骨の発達した男たちも少なくはない。例えば、「ジーメン」の弁慶や怪童丸、「薔薇族」のイカロスやオルフェウスなど、日本や古代ギリシャの神話、物語、歴史などに材をとったものが多いという面も関わっているだろうが、やはり、端的に、直道氏が男たちのそうした体に引き付けられるからなのだろう。
 直道作品の中に見受けられる、この現実の世から離れ抜け出た世界に引かれるというという側面は、独断ながら、長谷川サダオ( ~1999)に一脈通じるのではと私は思う。また、男たちの顔や風姿にストイック(禁欲的)で時に求道的な面がのぞくという点では、三島剛(1924~1989)につながるかもしれない。

 もう一点指摘したい。いかつく筋骨の盛り上がった男たちと組み合わされる花や鯉など日本画などによく描かれる景物の組み合せ。逞(たくま)しく剛毅なものと優艶なものの重なり合い。直道氏の中にうかがえる、そうした両面に引かれる有りようは私には好ましい。確かヴァニラ画廊で見た、開いた菊の花弁と組み合わされた男の裸身の絵が記憶に残っている。
 
 最後は私の独りよがりな願望。すでに触れたが、男ぽさの中に可愛げや愛嬌がうっすら滲んだ顔。更に欲を出せば、そうした複数の男たちが絡みの中で示す、蕩けるような顔つきと姿態。そういう直道画を見ることができたら殊の外うれしい。

上段…「亀に挑む若い裸身」(荻崎が自由につけた題) 2004年 アクリル
サイズ (約)(縦)52.0x(横)40.0(cm)
下段…「風神」(原題)  2009年 アクリル
サイズ (約)(縦)33.0x(横)23.5(cm)
 「荻崎正広コレクション ゲイ・アートの家」では上記二点のほかに一点、合わせて三点、奥津直道氏の原画を所蔵しています。
 
 

 

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