テーマ:灰赤色(はいあかいろ)の建物のある道

(短編小説) 灰赤色(はいあかいろ)の建物のある道

(その9) (最終回)  水岡は城址公園の前に立っていた。 傾きかけた陽が、公園の中の木々や石垣、白っぽく見えるさほど高くない建物に射していた。何時間か前、男が城址公園に行く道を教えてくれた時点で、水岡がその道を辿(たど)って行けば、ほぼ到着すると思われる頃合いだった。 水岡は公園の入口近くに置かれた木のベンチに腰を下ろした…
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(短編小説) 灰赤色(はいあかいろ)の建物のある道

(その8)  男は部屋の奥の窓に近い辺りに置かれた、肘(ひじ)掛けのある見るからに堅固な造りの木の椅子に、褌姿のまま腰を下ろした。水岡は、すぐさま男の前で両膝を付くと、両手を感触の残る男の両の尻たぶに回し、口を褌の前袋に押し当てた。男と水岡のこれらの振る舞いのすべては、街で男の後を追い始めた時点で、すでに決められていたという感慨が水岡…
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(短編小説) 灰赤色(はいあかいろ)の建物のある道

(その7)  一人、また一人と歩行者とすれ違ったが、彼らの視線が殊更向けられることはなかった。男が歩調をやや速めた。水岡は速さを合わせながら、左手をまだ触ってない男の左の尻たぶに置き、しかもゆっくり撫で回した。さすがに払い除けられるかと危ぶんだが、男はやはり取り立てて気に留める風はなかった。水岡の左の手のひらが這うことで、男の総身の輪…
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(短編小説) 灰赤色(はいあかいろ)の建物のある道

(その6) 「そうだったんですか…昔、どこかで一度顔を見たことがあるかな、それとも記憶違いかな、そんなことも考えながら後を追ってきたんです」 「この街に来てから、まだそんなに長くはないんだろう?」 「住み始めてからはまだ余り経っていないんですが、だいぶ以前、時折来たことがあるんです」 「それなら、前に一度位見たことがあってもおか…
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(短編小説) 灰赤色(はいあかいろ)の建物のある道

(その5)  程なく、二人はその場所に着いた。水岡は立ち止まり、右手に延びる道に眼をやった。鬱蒼としているという程ではなかったが、木々や草むらに遮(さえぎ)られ、道の奥までは見通せなかった。 男は厄介払いをしたという風ではなかったが、水岡を構う素振りもなく、無言で今までの道を歩いて行った。水岡は僅かの間佇(たたず)んでいたが、視…
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(短編小説) 灰赤色(はいあかいろ)の建物のある道

(その4) 「祭りがあったのですか」 水岡はさっきより近い距離で、しかも一語一語ていねいに声にした。男の視線が少し上に向けられた以外は何の変化もなかった。手を伸ばせば、男の肌に触れられる距離だった。中でも、厚く締まった男の両の尻たぶが水岡をそそりにそそった。今この尻の面(おもて)に手のひらを押し当てられるなら、自身に関わる一切合財と…
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(短編小説) 灰赤色(はいあかいろ)の建物のある道

(その3)  水岡の足が更に速まった。背後から近づく足音が、男の耳に届いているかもしれなかった。が、男の歩く姿に何の変化もなくごく自然だった。これほど申し分のない躯体(くたい)を持っていたら、他に欲しいものなど何もないだろうな、俺のように辺りに物欲しげな眼を向ける必要などないだろうな、と水岡はすんなり納得できた。  もう殊更(ことさ…
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(短編小説) 灰赤色(はいあかいろ)の建物のある道

(その2)  水岡は更に歩を速めた。男との距離はさほど縮まったようには見えなかった。一人、又、間(ま)を置いて一人、と水岡の傍らを歩行者が通り抜けた。彼らは水岡の姿も前を行く男の姿もまったく眼に入らないかのように、ひっそりと去って行った。  焦(あせ)りが水岡の裡(うち)でざわざわ不穏な物音を立てた。取り返しのつかない事態が背後から…
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(短編小説) 灰赤色(はいあかいろ)の建物のある道

(その1)  磨(みが)かれたような色白な肌に、深い艶と内側から弾(はじ)くような張りがあって、しかも筋肉が厚めに締まった男の後を、水岡は追っていた。人通りの少ない街中の道だった。  男が身に着けていたのは、白い六尺褌だけだった。男の裸身は、周囲の景物としっとり馴染んでいた。水岡には、自身がしばらく前にかなり大きな建物から外に出た記…
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