テーマ:金色(きんいろ)の光の道

(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その17)(最終回)  入笠山(にゅうかさやま)の入り日を思い起こし、それに重ねながら、山越え阿弥陀の姿と円光を心の裡(うち)で観想し、その光をあふれさせ、更にその光をどこまでも純化し切った果てで、その向こうから生身の芝岡かふっと現れる・・・。芝岡を想い限りもなく想い続けた極みで、当の芝岡に到達する…。芝岡を想う仕方は色々あるだろう…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その16)  武弘(たけひろ)との交わりが断たれてから一ヵ月位過ぎた四月下旬の土曜日、上野の国立博物館で行われた日本国宝展で、「山越阿弥陀図」(鎌倉時代・十三世紀・京都・禅林寺蔵)を見た。画集では何度となく眼にしていた作品だった。同じこの実物の作品を、遥か以前、どこかで眼にしたことがあるような気もしたが、別の「山越(やまごえ)阿弥陀…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その15)  武弘(たけひろ)との三月半程の関わりが、武弘からの電話がぷつりと来なくなったことで、あっけなく断ち切られた。私の側から連絡を取る手立てはなかった。Nサウナにはこれまでと同じように、主に土曜日、週に一度位の割で足を運んだが、武弘の姿はなかった。  交わりが断たれた今となると、武弘とはいったい何者だったのか、どこから来て…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その14)  やがて、今日はこの後、所属しているテニスクラブの忘年会があるということで、彼は私より先に帰った。別れる前に、次の週の日曜日にこのサウナで会う約束をし、私の電話番号を伝えた。彼は実家で家族と同居しているので電話は教えられない、又、携帯電話も持っていないとのことだった。  約束した日曜日の夕刻、Nサウナの個室を借りた。さ…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その13)  その夜は、更に二度三度と手を出しては拒まれることを繰り返した。さすがに、これ以上しつこくしたら罵倒されるかと恐れつつ、最後にもう一回だけと思い、廊下の壁を背にして立っていると、彼が私の前を通り大部屋の中に入った。直ぐ続き、立ち止った彼の腰の辺りに手を伸ばした。意外にも彼は私の手を退けず、そのままにさせた。二段式になった…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その12)  11月下旬のやはり土曜日の夕刻だった。武弘(たけひろ)の姿を見た。明かりの抑えられた大部屋で手を出したが拒まれた。やはり私は相手にされないのかと気分が沈んだ。 ややあって、彼が三階のロッカー室にある自動販売機の近くに立っているのを眼にした。彼の二の腕の辺りにそっと触れた。特にうるさがる風でもなく、私の方に和らいだ…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その11)  惹かれる深さでは銭湯の男や芝岡に及ばなかったが、顔も含め全身から放たれる生々しい精気も加わり、私が最も好ましく思う型に属しているのは間違いなかった。何か格技をやっている風に見えた。若々しかった。見るからに筋肉に張りとばねがありそうだった。  後で教えられたが、高校時代に陸上競技、今は大学のテニスサークルに入っていると…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その10)  武弘(たけひろ)は23歳で大学三年生だと言った。やや小柄で上半身下半身ともに筋肉質でよく締まっていた。殊(こと)に胸部が厚く堅かった。時間が取れる時はジムに週に何度か通い、躯を鍛えているということだった。  立っている時はさほど目立たないが、特に四つ這いで突き上げた時の尻の形は、銭湯の男や芝岡のそれを思わせて四角ぽく…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その9)  西原武弘(たけひろ)の尻の窪みの芯に、窓ガラス越しの日の光が当たっている。武弘はさっき私の眼の前で、うつ伏せていた姿勢から両膝を立て、尻を突き出した。私は両手で武弘の尻の芯を開け、窄(すぼ)まった肉のしっとりとぬめる軟らかい壁をひとしきり舌で舐め上げた。  「カーテンを少し開けてもいい?」と武弘に聞いた。「少しだけだよ…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その8)  繰り返しになるが、銭湯の男がそうであったように、芝岡も私の手の到底届かない浄化された霊と官能の光に包まれながら、生と死の両方から同じ遠さで隔てられた領土で生きている…。それだけでなく、銭湯の男と芝岡への思いに耽る時、遥か遠くを光源とするその同じ光が私にも射しているのではないか…。そんな思いが私を捕らえた。  その光が私…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その7)  二年四ヵ月程、芝岡の肌身を乾されている今、自分の躯のどこにも、芝岡の腰にしろ尻や陽根にしろ、生(なま)の感触が残されているとは思えなかった。  時折、交わった数多くの他の男たちのものとは違う、確かに芝岡のものだと思われる感触が、芝岡の映像に触発される恰好が呼び覚まされるのを覚えたりするものの、それにしたって、現実には全く…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その6)  銭湯の男は、あの時の三十代半ば位のまま、一歳も年を取ることなく、どことも知れぬその遠い世界で生きている…。というより、むしろその世界から、四十年程以前、郷里の銭湯にいた私の眼の前に、束の間仮現(けげん)し、たちまちにしてその世界に帰ってしまったのではないか…。輪をかけて埒(らち)もないと言われれば、一言(いちごん)も返し…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その5)  銭湯の男とはたった一度の出合いだけで、無論、躯の関わりを持つことなどあり得る訳もなかった。それに対し芝岡とは、初めて会った日はどうだったか確かな覚えはないものの、これまでの年月の中で、その時々での交わりの濃淡の違いは別にして、少なくとも、五、六回は肌を重ねた。  郷里の銭湯で男の裸に射していたのは、自然の外光と室内の電…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その4)  あの日、銭湯で出合った男の肌の内側から放たれていた、しっとりと潤った渋く光沢のある光は、元々、男の裸身の自前の光でありながら、私の後年の絵画や読書の経験からもたらされた光が付け加わり、最も高度に純化された官能の光となって、私の中に、都合四十年近い歳月仕舞われてきたのだ。  郷里の銭湯での体験から、恐らく優に二十年は経っ…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その3)  大学への入学を機に離れるまで過ごした私の郷里は、東側に八ヶ岳の峰々が聳(そび)え、西側に入笠山(にゅうかさやま)を始めとする山々が連なる山あいの町だった。八ヶ岳の切れの鋭い稜線と対照的に、西方の山並みはさほど起伏がなく、海抜も低めで、全体に穏やかな山容だった。  夕陽は、山頂の部分に樹木がなく裸になった入笠山の近くに沈…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

(その2)  私の眼が男の裸を独り占めした。躯(からだ)じゅうどこをとっても筋肉が弾くように引き締まり、全身が肌の内側からしっとりと渋い光沢を放っていた。普段、男が従事している仕事も、このような躯を作り上げるのに与(あず)かっていたかもしれない。  こういう男の顔と躯、筋肉と肌が、同じ性を持った男の私を、この世のありとあるものの中で…
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(短編小説) 金色(きんいろ)の光の道

 2000年8月に書き上げた作品です。 私にとっては、殊(こと)のほか愛着の強い作品です。前回載せた「灰赤色の建物のある道」とタイトルが似ているので、変えようかなとも思いましたが(笑)、そのままにしました。中味の字句も、当時のままを生かそうと考え、振り仮名を多めにした点などを除くと、変えないことにしました。  硬(かた)い表現で読…
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